マンションの権利書を紛失した!再発行や権利書ナシでの売却は可能か
所有しているマンションを売却したいとき「マンションの権利書が見当たらない」なんてことはありませんか?マンションの権利書を失くしてしまうと、売却できるのか不安になるでしょう。この記事では、そんなマンションの権利書を再発行できるのか、そして権利書がないまま売却はできるのかどうかを解説していきます。
マンションの権利書とは
そもそもマンションの権利書とはどのようなものかというと、正式名称は「登録済証」といいます。登録済証は、マンションの登記権利を取得したときに、登記所から発行されるものです。2005年に改正された不動産登記法によって、現在は「登記識別情報通知書」に変わっています。つまり、2005年以前に発行された「登録済証」か、2005年以降に発行された「登記識別情報通知書」が、マンションの権利書です。
権利書は紛失したら再発行できる?
マンションの権利書を失くしてしまった場合、再発行はできるのでしょうか?結論からいうと、マンションの権利書の再発行はできません。登記済証や登記識別情報通知書の発行は一度だけとされているからです。
また、2005年以前にマンションの登記権利を取得し、登記済証を失くしてしまった場合、2005年以降に切り替わった登記識別情報通知書なら発行できるのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、マンションの所有者が変わっていない場合、登記識別情報通知書の発行もできないので注意してください。
権利書を紛失した状態で売却する方法
権利書を失くしてしまい、さらに再発行もできないとなると、マンションを売却できるか不安になる方もいるでしょう。しかし、権利書を失くしてもきちんと手続きをすれば売却はできるので、安心してください。ここからは、権利書を失くした状態でマンションを売却するための制度をご紹介します。
事前通知制度
事前通知制度は、失くしたことによって登記済証や登記識別情報通知書を提供できないとき、失くした旨を申請書に記入し、登記を申請する制度です。事前通知制度は、失くしたとき以外にも、失念や失効、権利取得時からの不通知など、権利書を出せない正当な理由があれば適用できます。そんな事前通知制度を適用したいときは、まずは司法書士と面談をしましょう。司法書士は売主と買主の両方と面談をして、本人確認、所有権を移転することについての意思を確認します。
そして売主と買主は、委任状や登記原因証明情報に署名・捺印。また、司法書士が法務局で支払うための所有権移転に伴う登録免許税を用意しておきましょう。登録免許税は、マンションの引き渡し時に精算をして、買主から受け取れます。書類への署名・捺印と登録免許税が用意できたら、いよいよ司法書士による所有権移転の登録申請です。通常のマンション売却時は、引き渡し日に行いますが、事前通知制度は引渡しの前に登記申請をしなくてはなりません。
無事に登記申請ができたら、後日事前通知書が発送されます。事前通知書は、郵便局でしか受け取れないので注意しましょう。事前通知書を受け取ったら、署名・捺印をし、そのほかの売却に関する書類と一緒に決済場所へ持っていきます。そして残金決済が完了したら、司法書士が事前通知書を持って法務局に提出してくれます。これで、所有権移転の登記手続きは終了です。
司法書士等による本人確認情報の提供制度
司法書士等による本人確認制度の提供制度では、司法書士が登記名義人の運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの身分証明書で本人確認をし、本人確認情報を作成します。本人確認情報を法務局に提供し、登記官が内容を認めると、先ほどご紹介した事前通知制度が省略できるのです。本人確認情報の提供制度は、事前通知制度よりも簡易的なため、権利書を失くしたときの売却においてもっとも利用されている制度といえます。
公証人による本人確認制度
最後に、公証人による本人確認制度です。この制度では、登記名義人が登記の委任状への署名・捺印を公証人の前で行います。そして公証人が、登記名義人の本人確認を行い、その認証文を委任状につける方法です。法務局で登記官がその内容を認めると、事前通知制度が省略できます。公証人による本人確認制度では、公証役場への支払いが発生しますが、司法書士などに支払う費用よりも安くすみます。そのため、所有権移転の登記手続きにおいてなるべく費用を抑えたいという方におすすめです。
売却時の注意点とは
マンションの権利書を失くしても、マンションの売却はできるということがわかりました。ここからは、権利書を失くしたマンションを売却するときに注意するべき点をご紹介します。
マンションの売却を検討したら先に権利書があるか確認する
マンションの売却を検討し始めたら、まずはマンションの権利書があるかどうかを確認しましょう。マンションの権利書の有無を確認せず、売却決定後の決済直前に権利書がないことに気づいても、対応は間に合いません。
手続きをする司法書士や弁護士は、法的な責任が発生するため、かなり前から入念な準備を行います。そのため、決済直前に権利書がないことを伝えても、すぐに対応はできないのです。万が一決済日になって権利書がないとなったら、そのまま決済はできずに中止になります。したがって、売却前に権利書の有無を確認することがとても大切なのです。
権利書の保管場所を確認する
権利書をなくしたと思っても、もう一度権利書の保管場所を確認してみてください。権利書があると思っていた場所ではないところに保管している可能性もあります。もしほかの場所で見つかったら、再度権利書の保管場所を改めて決め、忘れないようにしましょう。
査定時にマンションの権利書がない旨を不動産会社に伝える
どうしてもマンションの権利書がない場合は、それに適した手続きをして売却をすることになります。そして売却時にマンションを査定するときは、査定をする不動産会社に、マンションの権利書がないことを必ず伝えましょう。権利書がないことを伝えれば、今後どのような対応をすればいいか教えてくれるはずです。
本人確認情報の提供制度にかかる司法書士手数料は売主負担
マンションの権利書を失くし、売却の際に本人確認情報の提供制度を適用する場合、司法書士手数料は売主負担となります。一般的な売買では、司法書士手数料は買主負担です。しかし、本人確認情報の提供制度は、司法書士が本人確認情報の書類を作成するため、通常よりも手数料が高くなります。そのため買主ではなく、売主負担になることが多いのです。
まとめ
ここまで、マンションの権利書を失くしたときの売却方法について解説しました。マンションの権利書は再発行ができないため、失くしてしまうと焦ってしまうでしょう。しかし、適した手続きをすれば、マンションの売却はできます。権利書がないときの売却方法はいくつかあるため、もっとも自分に合うと思う方法を選んでください。また、権利書がないときは必ず売却前に不動産会社に伝えることを忘れないようにしましょう。